02.カフェ文化と社交スタイル
ポルトガルは、ヨーロッパの中でイタリアに次ぐコーヒー好きの国と知られており、とりわけ、エスプレッソコーヒーにたくさんの砂糖を入れて飲むスタイルが好まれている。15歳頃からコーヒーを飲み始め、一人当たりの年間消費量4.7~5kg(エスプレッソ約400杯分に相当)というデータもあり、ポルトガル人は毎日1杯以上飲んでいることになる。
また、ポルトガルとコーヒーの関係はとても古く、現在、ポルトガルのコーヒー豆はブラジルやアフリカのモザンピーク等から輸入されているが、歴史を遡ると、ブラジルを世界最大のコーヒー生産国に押し上げた背景には、植民地帝国時代のポルトガルの姿がある。ブラジルが、16世紀初頭よりポルトガルの植民地となり、18世紀中頃ブラジル公国であった時代、フランス領ギアナからコーヒーがもたらされ、ポルトガル王国ジョゼ1世の命を受けたポンバル公の重商業政策の一環としてコーヒーの栽培が推進された。伝統的産業であったサトウキビやタバコ、綿、ブラジルボク等の栽培と異なり、ブラジルの国土全体の農産業に広く普及し、同国の経済を牽引した。コーヒーの栽培が本格化した19世紀中頃から150年間にわたり、最大生産国としての地位を不動のものとし、世界的にコーヒーの生産が一般化した今日でもなお、世界の1/3の生産量を誇っているのである。
そして、ポルトガル人の大半はカフェという社交場でコーヒーを楽しんでいる。近頃は、家庭用のコーヒーメーカーも普及し始めているようだが、まだまだカフェで飲むスタイルが主流だ。街を見渡すと、コーヒーのロット数に比例するようにカフェの店舗数も多く、ダウンタウンを歩けば5mごとにカフェを発見することに気が付く。
大手チェーンの店舗を見かけることはほとんどなく、半数以上が純喫茶のような佇まいで、常連客を迎え入れる。ダウンタウンに行くと様々なスタイルを楽しむことができる。カフェの目印は、入口に下がっているコーヒーメーカーのブランドロゴがわかりやすく、そのほとんどがポルトガルブランドだ。ポルトガルのコーヒーの歴史の長さは、コーヒーブランドの歴史の長さからも知ることができ、18世紀後半から歴史を紡ぐNicolaを初めとして、Sical、Buondi(Delta / Nestleの傘下)、Tofe、Cristinaといった種類がある。
ひと度、ポルトガルで暮らしてみると、日常のあらゆるシーンにカフェがフィットすることがよくわかる。価格は、エスプレッソならば60セント程度ということもあって、誰もが気軽に楽しめるということも理由の一つ。コミュニケーションやビジネスの場としてカフェの存在はなくてはならない文化として深く根付いているようだ。
まずは朝食後、カフェのマスターに挨拶をして、カウンターでさっと飲む濃い一杯は心地よく身体に染みわたる。一日の始まりは、規則正しい一杯から。
午後は昼食後の時間をたっぷりとって、友人や同僚を誘ってカフェに赴き、できれば店の外のテーブルに座りたい。小さなエスプレッソカップに砂糖をどさっと入れてくるくる溶かし、デザートのように少しずつ舐めるように飲む。太陽を浴びながら友人や同僚とのんびり過ごす時間は、とても病みつきになるひとときだ。暑い日に、熱いエスプレッソはちょっと気が進まないというときは、カフェのマスターに氷をお願いしてみる。グラスに入った氷にエスプレッソを注ぐと、メニューにはないアイスコーヒーが出来あがる。
小腹の空く夕暮れに訪れるならば、ポルトガルのカフェで忘れてはならないものがある、クリームや蜜などを使った、こってりした甘さに唸るスイーツだ。どんなカフェのショーケースにも必ず幾つか並んでいる。最も有名なスイーツのひとつパステルデナータ(Pastel de nata)は、パイ生地にカスタードクリーム乗せて焼いたエッグタルトだが、それに限らずどれも美味しい。洗練された印象や各店舗の個性はほとんど見られないが、自家製パンのような素朴な味わいと、伝統的なスイーツを作り続ける粋な心意気が感じられる。ちなみに、コーヒーは、スイーツを食べてしまってから注文するのが一般的なスタイル。
午後は昼食後の時間をたっぷりとって、友人や同僚を誘ってカフェに赴き、できれば店の外のテーブルに座りたい。小さなエスプレッソカップに砂糖をどさっと入れてくるくる溶かし、デザートのように少しずつ舐めるように飲む。太陽を浴びながら友人や同僚とのんびり過ごす時間は、とても病みつきになるひとときだ。暑い日に、熱いエスプレッソはちょっと気が進まないというときは、カフェのマスターに氷をお願いしてみる。グラスに入った氷にエスプレッソを注ぐと、メニューにはないアイスコーヒーが出来あがる。
小腹の空く夕暮れに訪れるならば、ポルトガルのカフェで忘れてはならないものがある、クリームや蜜などを使った、こってりした甘さに唸るスイーツだ。どんなカフェのショーケースにも必ず幾つか並んでいる。最も有名なスイーツのひとつパステルデナータ(Pastel de nata)は、パイ生地にカスタードクリーム乗せて焼いたエッグタルトだが、それに限らずどれも美味しい。洗練された印象や各店舗の個性はほとんど見られないが、自家製パンのような素朴な味わいと、伝統的なスイーツを作り続ける粋な心意気が感じられる。ちなみに、コーヒーは、スイーツを食べてしまってから注文するのが一般的なスタイル。
陽が落ち始めると、カフェのスクリーンにサッカーが映し出され、テーブルにはワインやビールが登場し始める。ポルトガルは情熱的なサッカー好きが多いことで知られており、しばしば心配になるほど白熱した口論が繰り広げられる。こちらが驚いていると、「喧嘩じゃない、サッカーの話をしているだけなんだ!」といって照れながら弁解してくれるところもチャーミングである。
さて、それでは美味しいカフェはどこか、そんなリストはきっと必要ないだろう。3世紀に渡りコーヒー豆を焙煎してきたこの国では、美しいビーチと同じくらいたくさんの、美味しいコーヒーをサーブするカフェがあるのだ。広場のランドマークになっている優美なテラスを目指すのも良い、メインストリートの歩道に並べられた賑やかな椅子に腰かけるのも良い、街区のなかに隠された静かな中庭を探すのも良い、親しい人たちを誘って、本日もカフェへ。