04.魚介も美味しいポルトガルの食卓
ポルトガルではスーパーや市場に並ぶ肉や魚、フルーツ、野菜が新鮮で安く、つい興奮して買い求めすぎることもしばしばで、手料理のバリエーションも広がり楽しいものだが、同時にレストランも比較的安価に利用できるのでおすすめしたい。観光地であっても日本の7割、ローカルレストランであれば4割程度のイメージだ。自分の時間を有効に、そして食文化を隅々まで楽しみたいならば、毎食レストランという選択肢も大いにあり得る。新しいお店の発見や、馴染みのお店でのスタッフとの会話は日常をちょっと刺激的でより楽しいものにするかもしれない。
レストランに入り、平皿とカテラリー、ワイングラスが並べられた席に着くと、まずは何も言わずともパンとオリーブがサーブされる。オリーブの器は2つに仕切られた特徴的な形をしていて、一方はオリーブの実が入っており、もう一方は実を食べたあと種を捨てるためのもの。平皿はメインディッシュを一度小さく取り分けるためのもので、これがポルトガルのダイニングスタイルだ。
メニューを開くと、肉料理のほか、魚料理が充実していることに気が付く。ポルトガル人は日本人と同じように魚をよく食べる。例を挙げると、365通りのレシピがあるといわれる干しダラ、毎年初夏になると街角で見られるイワシの炭火焼き、エビや貝類、タコ、イカなども好まれる。
肉料理は、骨付き豚肉などの豪快でシンプルなものが定番だが、なかでも特徴的なものを挙げると、ポルトの伝統料理にトリパス(Tripas)という臓物煮込みがある。かつて大航海時代に、栄養のある美味しい部分は海の外で戦う軍隊に差し出し、陸に残った人々は残った臓物を工夫して食べたことに由来するそうだ。
フランスの女の子、という意味のフランセジーニャ(Francesinha)は、歴史は浅いがポルト特有の料理で、食べ応えのある肉をパンで挟みチーズで包んだものに野菜とビールが隠し味のソースがたっぷりとかかっている、ポルト版クロックムッシュだ。
フランスの女の子、という意味のフランセジーニャ(Francesinha)は、歴史は浅いがポルト特有の料理で、食べ応えのある肉をパンで挟みチーズで包んだものに野菜とビールが隠し味のソースがたっぷりとかかっている、ポルト版クロックムッシュだ。
内陸やポルトガル北部が発祥とされるチョリソ(Choriço)やアリェイラ(Alheira)は、ソーセージのような腸詰め料理で、塩味が強く、しばしば料理のアクセントに使われるが、そのままでもお酒の肴としてもよく合い、また縁起の良いものとされている。メラメラと炎とともにサーブされる。また、日本人にとって珍しいものでは、七面鳥やウサギ料理も食べられる。
メインディッシュには必ずと言っていいほど付け合わせにポテトが添えてあるが、野菜不足が気になるときは、葉野菜のスープを一緒に頼むことを忘れないでおきたい。サラダを別に注文することもできるが、ビタミンや繊維はスープや日々のフルーツで補うのが一般的だ
これらに加えて、ポルトガル人はお米もよく食べる。よく出回っているのはインディカ米で普通の調理法では少し固めでぱさぱさとしているが、海鮮や野菜のリゾットにすると程よい食感に加えダシの旨味がしみ込み絶品である。
飲み物はどこのお店もワインが先頭にリストアップされている。ハウスワインならば安価で美味しく、ワインやビールは水と同程度の価格イメージだ。
さて、料理が運ばれてくると、とてもボリューミーでとても一人では食べきれない。日本人が小柄だからなのかと思いきや、ポルトガル人も同様で、半分だけ平皿にとりわけて、残りはテイクアウェイ。お店のスタッフも手際よく包んでくれる。こちらではレストランでお持ち帰りが一般的な文化のようだ。
最後に、これは好みの問題かもしれないが、ローカルなレストランでは繊細で凝った料理はお目にかかれない。魚も肉も豪快に炭火でグリル、あるいは柔らすぎるくらいまでとことん煮込む、仕上げは塩とレモンとオリーブオイルのみ、火加減や風味はいたってシンプルである。最近は観光客の増加により多様化が進み、気の利いた趣向のレストランも見つけやすくなってきた。とはいえ、ローカルレストランの素朴な料理にもやはり足しげく通う魅力があり、それはやはり素材の良さがあってこそ、食材の豊かな国であることを日々実感できる。